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うれしい知らせ⑤

その後は、注意事項をしつこく言われ、次の検診の日を決められた。 「その時には母子手帳を渡せると思うから、楽しみにしててね。 じゃあ、詩音君、お大事に。 継はもう来るなよ。」 苦虫を潰したような顔の継は、それでも 「ありがとうございました。」 と先生に一礼し、井本さんには満面の笑顔で 「ありがとうございました。 今後ともよろしくお願いします!」 なーんて愛想を振りまいていた。 「足元気を付けて…あぁ詩音、そこ危ない!」 「あっ、そこ段があるから…あっ、あっ」 と、五月蝿いの何の。 「継…妊娠は病気ではありませんっ! 普通にして下さい、普通に!いいですねっ!?」 俺にたしなめられ、しょぼんとうな垂れた継は、それでも俺に気を使いながら手を繋いで歩いていく。 この過保護っぷり。 誰に似たんだろう…あー、お義父さんに違いない。 今度、お義母さんに聞いてみよう。 「詩音…体調が良ければこのまま、うちと詩音の家とに報告に行かないか?」 「え…『今』ですか?………今日じゃなきゃ…駄目ですか?」 疲労と躊躇の匂いを嗅ぎ取った継は 「あ、いや、いいんだ。後で電話するから。 すまない、式で気も張って、その後の妊娠発覚だもんな。 疲れただろう。家でゆっくりと休もう。 何か食べたい物はないか? さっきもほとんど口にしてなかっただろう? 何がいいかな…」 「…ごめんなさい。日を改めて報告に行かせて下さい。 今日はもう、横になりたい…です。」 「わかった。気が付かなくてごめん、詩音。 取り敢えず、帰るから。」 ほんの数十分の移動だったのに、俺はいつの間にか寝てしまっていた。

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