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うれしい知らせ⑥
気が付いた時には、ベッドに寝かされていた。
あ…車で寝てしまって、継が運んでくれたんだ…
着替えも…
時計を見ると、あれから軽く二時間は経っている。
はっ
継…継はどこにいるんだろう。
慌てて飛び起きて継を探した。
「継!継!?どこ?どこにいるの?」
急に不安が押し寄せ、じわりと視界が滲んできた。
「けーい!」
「詩音!ここだよ!どうしたんだ?」
「継っ!!!」
ぼふっとその胸に飛び込んだ。
ぐりぐりと顔を押し付けて、匂いを嗅ぐ。
…はあっ…安心する…
継は俺を抱きしめて背中をそっと撫でてくれていた。
「俺がいなくて寂しかったのか?」
揶揄うように問われても、反論できずに黙ってこくこくと頷くことしかできない。
ふと顔を上げると、滲んだ視界の向こうに夫の笑顔が見えた。
「ほら、泣き虫。」
ちゅっちゅっと涙を吸い取られて、唇にも一つキスされた。
「後で幾らでも甘えさせてやるから…
お腹空いただろ?少しでも口に入れるように。
無理しなくてもいいぞ?
食べれる分だけでいいから。」
継が作ってくれたんだ…
「…はい、ありがとうございます。いただきます。」
差し出されたお椀には、溶き卵と…ささみだろうか、それに梅干しがのっかっていた。
少し掬って、ふうふうと冷ましてから一口入れる。
「…美味しい…継、美味しいです。
ありがとう…」
「食べれるか?…よかった。
火傷しないようにゆっくりな。」
時間をかけて、半分くらい食べた。
継は、俺が食べるのをにこにこと笑って見ながら、自分も同じ物を食べた。
葡萄の皮も剥いて、「ほら」と、一粒、口元に差し出された。
そのまま指ごと食むように、口の中に入れられた。
甘くてジューシーな果汁が、口の中に広がる。
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