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うれしい知らせ⑧

しばらくイチャイチャした後、晩ご飯も結局継が準備してくれた。 申し訳なく思いながらも、継に甘えて全部やってもらった。 「継、何もできなくてごめんなさい。」 「何言ってるんだよ。 詩音は今から何でも二人分になるんだから。 子育ては夫夫でしていくもんだ。 俺で間に合わなければ、お袋や詩音のお母さんにもお願いする。 俺は…気が利かなくて不器用だから、邪魔になるだけかもしれないけどさ。 詩音は気を使わずに、俺を頼ってくれ。 その方がずっとうれしい。」 「継…」 俺の夫は何て優しいんだろう。 ふわりと優しくて甘い匂いに包まれる。 え… この匂い、何だろう… この間から、何か違和感があった。 俺達二人以外の匂い。 瑞々しくて爽やかで、甘くて優しい… それはごく僅かで、時々感じるくらいだったから、気のせいだと思っていた。 あぁ…この子だったのか。 両手でそっとお腹に手を当てた。 気付かなくてごめんね。 ふわりと匂いが強くなった。 うん、わかったよ。 ここにいるんだよね、ちゃんと。 ママは泣き虫ですぐに落ち込むけど、パパは頼もしくって優しくって強いんだよ。 みんなを愛して愛される子になりますように。 「…詩音?詩音、どうした?」 「あ…今、この子から匂いがして…俺、今やっと気付いてごめんね、って謝ってたんです。 ふふっ…ちゃんと自己主張してます。」 「そうか…パパとママはラブラブだからな、邪魔はするなよ。」 俺の手に両手を重ねて、ははっ と笑った継は 「今夜はゆっくりと抱いて寝るからな。」 と俺を抱えて寝室へ連れて行った。 そして、継の匂いに抱かれて心も満たされたまま、夢の世界へと旅立ったのだった。

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