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謎の行動⑤
カチャリ
継が戻ってきた!
布団に重みが加わった。
「…詩音?…潜り込んでどうしたんだ?
俺がいなくて寂しかったのか?」
ボディソープと、激情の匂いがする。
継の匂いに満たされていくのがわかる。
でも、でも、これじゃあ足りないんだ!
じわりと溢れてくる涙を隠し、俺は眠ったフリをした。
布団をそっとめくった継は、俺がもう眠ってしまったと思ったのか
「お休み、詩音。」
と頬にキスをすると、俺を抱き込んで暫く頭を撫でていた。
そのうち、ぼそりぼそりと継の独り言が聞こえてきた。
「…自分だって悪阻で辛いのに…俺の事ばかり心配して。
浮気なんかするわけないだろ?
こんなにお前を愛してるのに…あり得ないよ…
気分も優れないくせに、俺のをしゃぶって。
無理しやがって。
でも…マジでうれしかった。
俺はこんなに詩音に愛されてるって、心も身体も震えた。
かわいいなぁ、詩音。
愛おしくて愛おしくて、堪らないよ。
…どんな子供が産まれるんだろうな。
αなら、徹底的に強く育てる。あ、でも愛情たっぷりにな。
Ωなら…嫁にはやらん!絶対甘やかして育てそうだ…溺愛…うん、きっとそうなる。
元気なら、俺は本当にどっちでもいいんだよ。
俺とお前の大切な宝物だから。」
聞いてる俺はもう、恥ずかしくて恥ずかしくて、次第に全身が熱くなっていく。
それと同時に、継を思う俺の気持ちが匂いとなって溢れ始めた。
それにハッと気付いた継が、真っ赤になりながら
「…詩音、起きてた?」
無言で頷くと、照れ臭そうに笑った継は
「ズルイよ、詩音。」
と俺をぎゅっと抱きしめた。
幸せ…濃くなる雄のフェロモンに包まれて、俺はやっと重くなってきた瞼を閉じて、夢の世界へと旅立って行った。
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