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謎の行動⑥
翌日俺は、中田部長の配慮のシフトのお陰で休みだった。
俺が休みと知るや、ズル休みをしたがる継を宥めすかし、脅し、煽てて、いつもの倍の時間を掛けて送り出した。
渋々靴を履いて何度も後ろを振り向き、俺を見る。
「行ってらっしゃい!」
出社する条件として『お昼を一緒に食べること』。
お弁当は持って行かず、家に戻って食べたいのだそうだ。
それくらいはお安い御用。
テーブルには二人分のお弁当が並ぶ。
窓から継の車が去っていくのを確認して、ひと息ついた。
あー…疲れた…
ぼふっ とソファーに座り込んで、お腹を撫でながら
「ねぇ、チビちゃん。君のパパは甘えん坊のゴン太さんだね。
そういう所は似ちゃダメだからね。」
と話しかけると、チビちゃんからまるで『大丈夫!』とでも言うような匂いがした。
チビちゃんはまだ眠っている時間が大半だけど、時々こうやって、匂いで気持ちがわかる。
ふふっ。
まだ生まれてもない子供と会話ができるなんて。
こんな特殊な能力の“超嗅覚”があってよかった。
さて…気分がいい間に洗濯をしよう。
洗濯かごに入っていた継の服を抱えた途端、大好きな継の匂いに包まれた。
頭がぼぉっとしてくる。
離したくないっ
強烈な思いに囚われて、それらを抱えて寝室へ行った。
部屋にもまだ継の匂いが残っている。
胸一杯にその匂いを吸い込むと、うれしくなってきた。
ベッドに上がり、持ってきた洗ってない洗濯物を並べる。
そして、一枚ずつ くんくんと犬のように匂いを嗅いで選別していく。
一番濃い匂いは…下着!
これは避 けておいて…
布団をめくり畳んで、足元に綺麗に半円を作る。
枕に近い順に、匂いの濃い物を並べていく。
色のバランスはこれでいいかな…
高さはこれくらい?
取っ替え引っ替え、並べていく。
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