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謎の行動⑦

まだ、足りない… ウォークインクローゼットに入ると、端から くんくんと匂いを嗅いでいって、濃い匂いの物を選んでベッドに持って行った。 ふふん。 いい感じに増えてきた。 きちんと畳んで置いていく。 積み重ねて壁のようになってきた。 継、褒めてくれるかな。 俺…頑張ったんだよ! 時計を見ると12時を少し回っていた。 真ん中に座って、継の匂いに囲まれてワクワクしながら待っていると、インターホンが鳴った。 継だ! 「はい!」 「詩音、ただいま!」 「今、開けますっ!」 間もなくガチャリと鍵が開く音がして、継が帰ってきた。 「詩音…詩音を補充させて…」 いきなり抱きしめられて、キスされる。 俺も継の匂いを満喫する。 あぁ…やっぱり本物には敵わない。 「ねぇ、ねぇ、継!こっち来て! 俺、頑張ったんだよ!見て見て!」 ぐいぐいと手を引っ張り、寝室へと連れて行く。 「どうしたの?何か作ったの?」 「うん!初めてだから、下手くそだけど…」 を見た継は、不思議そうな顔をして俺を見た。 え…これじゃあダメだったの? 気に入らない? ポロリと涙が落ちてきた。 くるりと踵を返してトイレに籠ると鍵を掛けた。 どうしよう…失敗した… やっぱりダメだった… 気に入ってもらえなかった… 「詩音!詩音、どうしたの?出ておいで!」 ドアを叩く継の声も耳に入ってこない。 水の中に入って耳がおかしくなる、あんな感じ。 初めてだから仕方ない? でも、頑張って作ったんだよ! 嫌だったの?俺のこと、嫌いになった? うっ、うっ…ぐすっ…うえっ…ぐすっ

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