476 / 829
謎の行動⑧
side:継
訳がわからない。これは何だ?
家?鳥の巣?
何故俺の服や靴がベッドの上にあるんだ?
オマケに、詩音が手にしているのは俺が脱ぎ捨てた下着じゃないか!
詩音は何故か得意そうだ。
『褒めて、褒めて』っていうワクワクした匂いがする。
何を褒めるの?
不思議そうな顔をしてノーリアクションの俺を見ていた詩音は、段々と暗い顔になっていき、ついにポロリと涙を零した。
えっ、えっ!?何で泣くの?
あっ、何処へ行く?しおーん!
「詩音!詩音、どうしたの?出ておいで!」
今回はトイレに篭ってしまった。
啜り泣く声が聞こえる。
ヤバい、マズい。
俺は何をした?何もしていない!
とにかく誰かに聞こう!
そうだ、この時間なら中田だ!
ワンコール ツーコール…
「もしもーし、社長、何ですかー?」
「中田っ、頼む!助けてっ!」
俺は、斯々然々 …と端的に現状を伝えた。
「あー、それ…『Ωの巣作り』だよ。
普通発情期前に現れるんだけど…詩音君、余程継のことを愛してるんだなぁ。
注意事項!
・とにかく喜べ!大袈裟なくらいにな。
・どこでもいいから褒めろ!色とか形とか、なんでもいいから!
・そして労え!俺のためにありがとう、とか、頑張ったな、とか。
戻ってきたら教えてやるから、とにかく抱きしめて褒めちぎれ!
good luck!」
電話が切れた。
俺は慌てて詩音の元へ向かうと、中田に言われた通りに、ドア越しに喜び、褒めて、労った。
しばらくして、詩音が顔を出した。
鼻は赤く、目も腫れている。
すかさず抱きしめて
「俺のためにあんな素敵な巣を作ってくれるなんて…ビックリし過ぎて声も出なかったよ。
さあ、一緒に行って俺をそこで癒してくれ。
頼むよ、詩音。俺を連れて行って?」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!