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謎の行動⑧

side:継 訳がわからない。これは何だ? 家?鳥の巣? 何故俺の服や靴がベッドの上にあるんだ? オマケに、詩音が手にしているのは俺が脱ぎ捨てた下着じゃないか! 詩音は何故か得意そうだ。 『褒めて、褒めて』っていうワクワクした匂いがする。 何を褒めるの? 不思議そうな顔をしてノーリアクションの俺を見ていた詩音は、段々と暗い顔になっていき、ついにポロリと涙を零した。 えっ、えっ!?何で泣くの? あっ、何処へ行く?しおーん! 「詩音!詩音、どうしたの?出ておいで!」 今回はトイレに篭ってしまった。 啜り泣く声が聞こえる。 ヤバい、マズい。 俺は何をした?何もしていない! とにかく誰かに聞こう! そうだ、この時間なら中田だ! ワンコール ツーコール… 「もしもーし、社長、何ですかー?」 「中田っ、頼む!助けてっ!」 俺は、斯々然々(かくかくしかじか)…と端的に現状を伝えた。 「あー、それ…『Ωの巣作り』だよ。 普通発情期前に現れるんだけど…詩音君、余程継のことを愛してるんだなぁ。 注意事項! ・とにかく喜べ!大袈裟なくらいにな。 ・どこでもいいから褒めろ!色とか形とか、なんでもいいから! ・そして労え!俺のためにありがとう、とか、頑張ったな、とか。 戻ってきたら教えてやるから、とにかく抱きしめて褒めちぎれ! good luck!」 電話が切れた。 俺は慌てて詩音の元へ向かうと、中田に言われた通りに、ドア越しに喜び、褒めて、労った。 しばらくして、詩音が顔を出した。 鼻は赤く、目も腫れている。 すかさず抱きしめて 「俺のためにあんな素敵な巣を作ってくれるなんて…ビックリし過ぎて声も出なかったよ。 さあ、一緒に行って俺をそこで癒してくれ。 頼むよ、詩音。俺を連れて行って?」

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