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惚気②
ぐふぐふと変な笑い方をしながら戻って行く中田を見送った後、振り返ったら篠山さんが満面の笑みで待っていた。
「…篠山さん…聞いてた?」
「はい、社長!
…そうですか、巣作りですか…良かったですね。
それも発情期でもないのに。
羨ましいほど、番の詩音様に愛されてらっしゃるんですね!」
「…篠山さん、社用で出掛けてたのでは…」
「はい。社長がお戻りの少し前に着いたのですが、お声を掛ける前に、中田部長を引っ張って来られてお話を始めたので…タイミングを逃してしまいました。
黙って聞いて申し訳ございませんでした。」
「あ、いや、いいんだよ。
あの…因みに篠山さんのとこはどうだったの?
巣作り…」
「はい、うちも御多分に洩れず、発情期の真っ最中に何度も作ってくれましたよ。
でも、あれは毎回ではないんです。
タイミングというか、思いが極まった時というのか…
私も初めて見た時は、訳が分からなくて褒めたりしなかったもんですから、泣かれて泣かれて…離婚の危機にまで発展してしまったんです。
その意味が分かってからは、オーバーなくらいにリアクションしましたよ。
健気に作ってる姿が目に浮かんで愛おしくて…
あっ、失礼しました!
余計なことを喋り過ぎました…」
「いえいえ。
篠山さんもラブラブなんですねぇ。
俺達もいつまで経ってもラブラブでいられるかなぁ…」
「社長こそ!
詩音様にゾッコンでいらっしゃるから。
それに詩音様も。」
「…詩音に会いたいなぁ…」
ポツリとそう漏らすと
「さっきお会いになって、詩音様をチャージされたばかりでは?
さあ、午後からも気を引き締めて頑張りましょう!」
と揶揄われ、ハッパを掛けられた。
…流石、優秀な秘書殿…
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