481 / 829
惚気④
そのうち、詩音が目を覚ましてしまった。
「…ん…継?」
目を擦りながらもぞもぞと起きてきた詩音は、俺の顔を見ると、ふわりと花が咲いたような笑顔を向けた。
俺はゆっくりと詩音に近づくと
「また、少し手を加えたのか?
前のも良かったけど、これも上手にできてるぞ。
随分時間が掛かったんじゃないのか?
偉かったな。
お腹空いただろ?すぐに用意するから、待ってろ。」
俺が褒めると、詩音はうれしそうに俺に寄り添ってきた。
ちゅっ とキスをすると擽ったそうに首を竦め、それでも俺に体重を預けてくる。
どうやら…この“巣作り”の間は、話し方も、少し舌っ足らずになり、甘ったれの子供のように退行してしまうらしい。
それがまたかわいくて、庇護欲を誘ってしまうのだ。
「さぁ、詩音。ご飯の用意をしてくるよ。
出来合いの物でごめんな。
ちょっと待ってて。」
頭を撫でながら言い聞かせ、買ってきた惣菜を並べ、冷凍していたご飯を温め、インスタントの味噌汁を作り、詩音を呼びに行った。
ご機嫌なまま きちんと平らげて、片付けをしてから、詩音と一緒に風呂に入る。
いつもなら、一緒に入るのを恥ずかしがって躊躇するのに、今日は俺の手を引っ張り誘う詩音。
全身くまなく洗ってやり(身重の身体だ。もちろんエッチは無しで)一緒に湯船に浸かる。
背中を俺に預け、微笑む詩音は…まるで天使だ。
俺の湧き立つ欲望を死に物狂いで押さえ込み、詩音を先にバスタオルで包 み、髪の毛を乾かしベッドへ寝かせた。
「すぐに来るから…いい子で待ってて。」
こくりと頷くその様に、身悶えしそうになった。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!