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惚気④

そのうち、詩音が目を覚ましてしまった。 「…ん…継?」 目を擦りながらもぞもぞと起きてきた詩音は、俺の顔を見ると、ふわりと花が咲いたような笑顔を向けた。 俺はゆっくりと詩音に近づくと 「また、少し手を加えたのか? 前のも良かったけど、これも上手にできてるぞ。 随分時間が掛かったんじゃないのか? 偉かったな。 お腹空いただろ?すぐに用意するから、待ってろ。」 俺が褒めると、詩音はうれしそうに俺に寄り添ってきた。 ちゅっ とキスをすると擽ったそうに首を竦め、それでも俺に体重を預けてくる。 どうやら…この“巣作り”の間は、話し方も、少し舌っ足らずになり、甘ったれの子供のように退行してしまうらしい。 それがまたかわいくて、庇護欲を誘ってしまうのだ。 「さぁ、詩音。ご飯の用意をしてくるよ。 出来合いの物でごめんな。 ちょっと待ってて。」 頭を撫でながら言い聞かせ、買ってきた惣菜を並べ、冷凍していたご飯を温め、インスタントの味噌汁を作り、詩音を呼びに行った。 ご機嫌なまま きちんと平らげて、片付けをしてから、詩音と一緒に風呂に入る。 いつもなら、一緒に入るのを恥ずかしがって躊躇するのに、今日は俺の手を引っ張り誘う詩音。 全身くまなく洗ってやり(身重の身体だ。もちろんエッチは無しで)一緒に湯船に浸かる。 背中を俺に預け、微笑む詩音は…まるで天使だ。 俺の湧き立つ欲望を死に物狂いで押さえ込み、詩音を先にバスタオルで(くる)み、髪の毛を乾かしベッドへ寝かせた。 「すぐに来るから…いい子で待ってて。」 こくりと頷くその様に、身悶えしそうになった。

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