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準備品④
「いらっしゃいませ。三名様でしょうか?」
「はい。あちらのソファーがいいんだけど。」
「承知致しました。ご案内します。」
お義母さんは、俺達がゆっくりと座れるソファーの所を選んでくれた。
「あははっ、楽しかったぁー!
結婚のお祝いもそうなんだけど、いつもベビーちゃんの物を選ぶ時って、ワクワクするんだよね。」
「『いつも』って…そんなに出産のお祝い事が多いんですか?」
右京さんが不思議そうに尋ねた。
「そう。
うちの社員さんにお祝い事があったら、必ずそうしてるの。
会社からの御祝儀とは別に、パパと俺から。
選ぶの楽しいよぉ〜。」
お義母さんが嬉しそうに微笑んでいる。
今日は家を出る時から、ワクワクの匂いが溢れてたけど…
「すごい…社員さんのこと、全て把握されてるんですか?」
「うん。社員さんは家族みたいなものだからね。
先代からの言いつけもあるし、俺もそういうのが大好きだし。
それにね、向こうから言ってくるよ。
『結婚します!』『子供できました!』
って、催促が。あははっ。
中には
『◯◯というブランドの△△がほしいです』
ってはっきり指定してくる子もいるよ。
今時の子だねー。
あ、何飲む?
二人は何がいいかな…すみませーん!
ノンカフェインのって、どれですか?」
スタッフさんを捕まえたお義母さんが、あれこれ聞いている。
「あ!たんぽぽコーヒーがあるっ!
お義母さん、俺、それにするっ!
詩音君は?」
「はい!俺もそれで!」
「じゃあ、それ二つと、俺は…『今日のおススメ』をホットで。
あっ、ケーキもあるっ!右京君、詩音君、どれにする?」
「うーん…アップルパイ!」
「俺は…ショートケーキ!」
「んーっと…チーズケーキ!」
スタッフさんが微笑みながら、オーダーの復唱をして去って行った。
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