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準備品⑥
お義兄さんと、遅れてやってきた継も加わって、今日揃えてもらった品物のことで大盛り上がり、賑やかな夕食となった。
悪阻も酷くなくて良かった!
お義母さんの料理をお腹一杯に堪能する。
少し残った物は、持ち帰り用にお願いしてタッパーに詰めてもらった。
今日の片付けは、お義兄さんと継が かって出てくれた。
お義父さんとお義母さん、右京さんと俺は のんびりさせてもらっている。
お義母さんが、そっと右京さんの横に移動してきた。
どうしたんだろう?
「あのね、右京君。」
お義母さん、畏まった匂いがしてる。
右京さんがびくっと跳ねた。
「はい??何でしょうか?」
右京さんも訝しげな顔をして、お義母さんをじっと見つめた。
そうか…右京さんは“超視覚”。お義母さんの気持ちが色で見えるんだ…
「…これ。詩音君のお母さんから。」
え?母さん?俺の?どうして右京さんに!?
差し出されたのは白い封筒。
戸惑う右京さんに、お義母さんが微笑みながら
「いいから、読んで。」
お義母さんと封筒と、俺の顔を交互に見ながら、右京さんが封を切り、便箋を取り出した。
じっと読んでいた右京さんの目に、見る間に涙が溢れ、ポロポロ溢れ出した。
「うっ、右京さん!?うちの親が何か失礼なことでも!?
ごめんなさいっ!!!」
右京さんは静かに首を左右に振ると
「違うよ、詩音君。
俺、うれしくて、うれしくって…」
大きな目から涙をポロポロ零しながら、手紙を差し出してきた。
その震える手から、そっと手紙を受け取り、ばくばく跳ねる心臓を落ち着かせようと、大きく息を吐いた。
そして、畳まれていた便箋を開き、読み始めた。
右京さんは、お義母さんに縋り付いて声も出さずに静かに泣いていた。
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