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準備品⑨

お義父さんが『みんなが落ち着くように』と、右京さんと俺には温かい麦茶を。 他のみんなにはコーヒーを入れてくれた。 部屋の中は、ほわほわと柔らかくて温かな匂いがする。 右京さんは真っ赤な目をしていたが、もう泣き止んでいた。 お義兄さんがアイ◯ノンをタオルで包んで持ってきて、右京さんの目元を冷やしていた。 俺は人目も憚らず継にぴったりとくっ付き、継も俺の腰を抱いていた。 お義父さん達の前だというのに、何故か継と離れたくなくて…継はそんな不思議な気持ちの俺の匂いを嗅ぎ取ったのか、俺をしっかりとホールドしていた。 お義母さんはコーヒーをひと口飲むと 「あー美味しい!パパ、ありがとう!」 と、こちらもぴったりとお義父さんに寄り添った。 「…右京君。」 「はいっ。」 「潤と喧嘩しても行き先が増えたよ! 良かったね!」 「はい!ふふっ。 …詩音君、ありがとう…俺、俺…」 また、ぶわりと右京さんの目に涙が溜まっていく。 俺はぶんぶんと首を横に振り、右京さんの前に飛んでいって、その手を握りしめた。 「…右京さん、母はアップルパイが得意なんです! 落ち着いたら食べに帰りましょう! …に!」 それを聞いた右京さんは、ふにゃ と顔を崩し、俺の手を握り返してきた。 「…うん、うん。ありがと…」 ふえっ、ふえっ と泣き出した右京さんをお義兄さんが優しく抱きしめて 「みんなー、右京を泣かさないでよぉ〜。 目ん玉溶けてなくなっちまうよぉ〜。」 とのんびり言うもんだから、みんなで泣き笑いになった。

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