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不満 side:継①
〈ある日の休日〉
久し振りに何の予定も入れず、のんびりと過ごしている。
ここ最近何かとバタバタとしていて、二人でゆっくり過ごすなんて珍しい。
僅かばかりの期待をするが、俺のハニーは相変わらずパタパタと動き、家の片付けと掃除をして、なかなか俺の横に座ろうとしない。
心が綺麗で優しくて
周囲に気配りができて
俺のことばかり考えて気にして
仕事ができてみんなに愛されている
ふんわりと微笑むと周りの空気が変わり
落ち込んでいたら、この世の終わりのような気がする
泣き虫で、すぐ拗ねるけれど、それもまた愛らしい
怒らせたらどこかに閉じこもって出てこなくなる…これは辛い
自分のことをすぐに否定するが、それも大分落ち着いてきた
美人で、色白でシルクのような肌触りで
細く折れそうな腰を抱き寄せると
俺の腕の中で恥じらいつつも妖艶に乱れる様は、それだけでイってしまいそうになる
俺を愛し翻弄する愛らしい存在、詩音。
お前が俺のことを愛してくれているのは、重々分かっている。
分かっているんだ!
分かっているけど…でも…
俺のことをどれくらい放っておくつもりだ?
悪阻もそれほど酷くはないと言ってた。
少しくらい…夜の相手をしてくれてもいいのではないか?
そんなことを考えているけど、当の本人は
『継のご機嫌が心なしか悪い原因がわからない』
と小首を傾げている。
そう、俺達運命の番は、匂いで相手の気持ちが分かるのだけれど。深いところまではキャッチできない…
『欲求不満』という言葉は、詩音の脳内にあるのだろうか?
悶々としながら、詩音が入れてくれたコーヒーを口にする。
「…美味い…」
その声が聞こえたのか、詩音がふにゃりと微笑んだ。
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