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のんびり⑤

その瞬間ドアが開いて、抱き合っている俺達に気付きハッと気不味そうな顔の秘書殿と目が合った。 うわぁぁーーー!篠山さーーーん!! 声にならない声で叫ぶ。 「うわっ、社長!詩音様! 失礼しましたぁぁ!!!」 「…いや、いいから…篠山さん、入って…」 「うわぁ…申し訳ありませんっ!」 俺は穴があったら入りたかった… それなのに継は相手が篠山さんだと分かると、また俺を引き寄せて、ゆったりと構えていた… ご機嫌な継と真っ赤な顔の俺と、申し訳なさそうな篠山さん… 篠山さんは、わざわざ妊夫の俺のために『赤ちゃん番茶』なるものをゲットしに出掛けていたのだった。 早速戦利品を入れてくれたのだが、優しい味で、俺はすぐに気に入った。 「篠山さん、これ、美味しいですっ!」 「それは ようございました。お口に合って何より。 …申し訳ありません…社長はお出掛けだと伺っておりましたので… 油断しておりました…申し訳」 「篠山さん、ストップ!謝罪は無しっ! …イチャイチャしてた俺が悪いんだから。 はい、この話はおしまいです!」 「…俺、仕事に戻ります…」 「詩音様…お帰りお待ちしております…」 「しおーーん!待ってるからなぁ!」 とぼとぼと反省しながら廊下を歩く。 はぁっ…調子に乗った…いくら継と会えてうれしかったとはいえ…ここは会社だ! 詩音、しっかりしろ! ぽこぽこっ はあっ、チビちゃんにも叱られちゃった… うん!わかった! 俺、仕事頑張るよ!継を充電できたし。 お腹を撫でて気合いを入れ直し、俺の“のんびりタイム”は終わりを告げたのだった。

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