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プレゼント ss
もうすぐ継の誕生日がやってくる。
『小さい頃から、特に何もほしがらなかった子だったのよ。
何がいいのか、直接本人に聞いて見たらどう?
今ならほしいものを詩音君に言えるかもしれないね!』
って、お義母さんが言っていた。
料理はちゃんとしようと思ってる。
フルコースまでいかなくても。
ケーキだって俺が作ろうと考えてるんだから。
直接聞いちゃったらサプライズにならないし…
そうかといって、好みじゃない物をあげて…ガッカリされるのも嫌だし…
継は洋服もお気に入りのブランドがあって、自分で買ってるから、服に関しては余計なことはしたくないんだ。
うーーん…どうしようかな…
やっぱり、聞こう!
「ねぇ、ねぇ、継!」
新聞を読んでいる継の側に、にじり寄り、甘えた声を出してみた。
ふっと紙面から視線を外した継は
「どうした?詩音。何かおねだりか?」
ぷうっ と膨れて
「違いますっ!…あのね、もうすぐ継のお誕生日でしょ?」
「うん、そうだな。」
「継と一緒に祝う、初めてのお誕生日だし、俺、何かプレゼントしたいんですっ!
ほしい物、教えて下さい!」
「気を遣わなくていいよ。
…一番ほしかった物は、もうもらってるから。」
「え?」
「…詩音と…子供と。俺だけの家族。
それで俺はもう満足なんだよ。」
「…継…」
「おいで、詩音。」
意外な答えに、おずおずと継にくっ付くと、膝に乗せられ横抱きにされた。
「かわいいなぁ…詩音はいつでもどんな時でも、かわいいっ!
誕生日には、何もいらない。
ずっと、俺の側にいてくれたらいい。」
「…継…平日ですよ?俺達、仕事…」
「大丈夫!うちの会社は“バースデー休暇”があるから。
本人だけじゃなくて、その伴侶の誕生日にも休みが取れるから!」
そうだった…忘れてた…
「…じゃあ、一日中一緒…に?」
「そう。詩音の時間を俺に頂戴。
それがプレゼントね!」
うれしそうに微笑む継の胸に寄り添って、聞いて良かったのか、黙って何か用意すれば良かったのか…複雑な心境の俺なのだった…
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