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愛情過多③
送って一分も経たないうちに、伊織さんから電話が掛かってきた。
『詩音くーん!久し振り!チビちゃんはご機嫌麗しいかな?』
「伊織さん!ご無沙汰してすみません!はい、お陰様で!
あの…お忙しいのにごめんなさい。」
『元気で何より。
今日はすっごく暇だから大丈夫!
で?継君甘えたさんだって?』
「そうなんです!
実は…俺が産休で一緒に出勤しなくなってから、毎朝出社を渋るし、昼休みには『会いたい』って電話が掛かるし。
退社時には『今から帰るからね』ってこれもまた電話が掛かるし。
合間には『今何してる』やら『寂しい』やら、意味不明なラ◯ンが入ってきて…
既読無視や未読無視してたら電話が掛かってくるし。
正直、とっても煩わしいんです。
伊織さん、香川先生をどうやって交わしてたんですか?」
あははっ と軽やかな笑い声がした。
『クックックっ…ごめん、ごめん。
この間も右京君から同じ相談があったからね…
あー…典型的なαの溺愛だよねぇ。
これね…残念だけど治らないよ。
絶対的αの庇護欲大発動中だから。』
「え!?治らない!?」
『うん。絶対的αの性分だから。
愛して愛して止まない大切な番が、自分のDNAを持つ子供を宿して、この世に送り出そうとしてるんだ。
それを守ろうとする余りに、極端な溺愛っぷりを発揮するんだよ、無駄にね。
自分の目に触れない間、何処で何をしているのか、何を考えてるのか、気になって気になって仕方がないんだ。
俊哉さんなんてもっと酷かったよ!
俺が妊娠してる頃は、携帯なんて便利な物がなかったからね。
固定電話鳴りっぱなし!
流石にキレて、電話線ブチ切ったりマンション借りたこともあったな…』
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