529 / 829
愛情過多④
あぁ…目に浮かんだ…お気の毒な伊織さん…
「…そうなんですか…諦めるしかないんですね…」
『だからね、ルールを決めるの。
電話は一日何回まで。
メールもラ◯ンも一日何回までって。
ストレスが溜まっていいお産ができない、赤ちゃんにも悪い影響がある、って脅してやればいいんだ。
でもね
“とても心配してくれるのは十分過ぎるほど分かってる。
でも、そんなに心配されたらそれがマイナスのオーラに変わるから、胎教にも育児にも良くないから、程々にしてね”
って感じのフォローは必要だよ。
“あなたの想いは分かってるから、ありがとう”
ってことはちゃんと言わなきゃ。
でないと、心配する気持ちを分かってくれてない!って逆ギレするからね。』
「…心配してくれてる、ってのは分かってるんですけど…過剰過ぎて…」
『うんうん。そうなんだよ。
だからこそ、ちゃんと言葉にして伝えなきゃ。
ね!?
あのね、あっちも無意識なんだよ。』
「え?無意識?」
『そう。番が好き過ぎて好き過ぎて。
その想いが強過ぎて、離れたくなくって駄々捏ねたり、何度も連絡してきたり。
いつもは完璧な絶対的αがメロメロになって、番を無意識に求めてるんだ。
心から愛されてる証拠だよ、詩音君。』
かあっ と全身が熱くなった。
電話の向こうの伊織さんの柔らかな微笑みを感じていた。
完璧な絶対的αに無意識に求められる…
継…ごめんなさい。
溢れるような、いや、溢れ出して止まらない継の愛情表現を否定してごめんなさい。
こんな俺のことを心から愛してくれてるんだ。
うれしくて恥ずかしくて…
継のことを“煩わしい”とか“ウザい”とか思ってた自分が情けなく、恥ずかしくなった。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!