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愛情過多⑦
ここにいない継に、ごめんなさいを繰り返し、えぐえぐと一人泣いていた。
俺の心は、いつの間にか本格的に降り出した今日の雨空のように、真っ暗で寒々しかった。
ぐにゅっ
チビちゃん!起きたの?ごめん、お腹空いた?
そう言えば、お昼ご飯、まだ食べてなかったよ。
みかんも食べなきゃね。お義母さん、『チビちゃん大好きだから』って、昨日わざわざ届けに来てくれたんだよ。
そっとお腹を撫でた。
ぐにゅ
今度は優しく押し返された。
ふわん と心配そうな匂いがした。
優しい子。
俺を慰めようとしてくれてる。
「ありがと、チビちゃん。泣き虫のママでごめんね。
俺、パパに優しくなかったんだ。
帰ってきたら、沢山謝らなくっちゃ。」
何度もありがとうと伝えると、安心したのかまた静かになった。
チビちゃんにまで心配を掛けてしまった。
ダメダメだな、俺。
嫁もママも失格だな。
涙と鼻水を拭いて、顔を洗った。
鏡に映る顔をじっと見つめて『詩音、しっかりしろ』って気合いを入れた。
少し遅めの昼食を終わらせ、継の喜ぶものを作ろうと冷蔵庫を開けた。
俺一人では危ないから と土日で纏め買いをするから、食材は何でも揃っている。
過保護だ。
俺だって一人で買い物くらい行けるよ。
あぁ、そうか。自由にならなかったことも継に対して不満に思ってたんだ。
きちんと話をしよう。
伊織さんが教えてくれたように。
いくら運命の番で、俺が超嗅覚で他人 の感情が分かると言っても、本音は伝えないと。
何でも話し合おうと決めてたのに。
自分の殻に閉篭もる悪い癖が出ていた。
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