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愛情過多⑨
俺は大きく深呼吸して打ち明ける。
ごめんなさいを沢山心の中で言いながら。
「俺が産休に入ってから…継が毎朝出勤する時駄々を捏ねるのも。
何度も何度も電話やメールを送ってくるのも。
平日一人で買い物に行かせてくれないのも。
…嫌だ…ウザいって、煩わしいって…思ってた。
だから…自分でも気付かないうちに、継のことを蔑 ろにしてたかもしれない。
…ごめんなさい。」
涙が溢れてくる。
ダメだ。最後までちゃんと伝えなきゃ。
ぐいっと手の甲で涙を拭うと
「…伊織さんに言われたんだ。無駄な庇護欲を発揮するのは
『絶対的αの性分』
『心から愛されてる証拠だ』
って。
継はいつもいつも俺とチビちゃんのことを思って愛してくれて、言葉や態度に表してくれてたのに。
俺、そんなこと考えないで、自分のことばっかりで。
お昼に電話くれた時に、継から『お前、最近』って言われて初めて気付いた。
俺、継に…継に『愛してる』って最近ずっと言ってなかった、って。
ごめんなさい。
俺、自分のことばかりでごめんなさい。
こんな俺、愛想尽かされても当然だよね?
嫌われても…仕方ない…と思う…
でも、でも…俺は…俺は、継を愛しています。
継だけを…愛、むぐっ」
ふわりと抱きしめられ、言葉を紡ぎかけた唇を塞がれた。
継からいつもの『愛してる』の匂いが雪崩れ込んだ。
愛してくれてるの?継を邪険にしてたんだよ!?
隙間から侵入した継の舌は熱くて甘くて。
口内を隈なく嬲られて。
零れ落ちる涙も舐め取られて。
「“ごめんなさい”より“愛してる”って言ってほしい。」
耳元でささやかれて、また涙が溢れた。
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