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愛情過多⑩

俺を抱きしめて沢山キスをした継に連れられて、バスルームへ向かう。 恥ずかしかったけれど、一枚一枚ゆっくりと服を脱がされて、大きくなったお腹を継の目の前に晒した。 継は、お腹を隠そうとした俺の手をやんわりと外して、跪いてお腹にもキスした。 愛おしげに大きな両手をお腹に当てて 「詩音が俺に何をしようが思おうが、俺は詩音を愛してるんだ。 俺が愛してるんだからいいじゃないか。」 と笑った。 それを聞いてまた泣き出した俺の、身体の隅々まで丁寧に洗ってくれ、風呂から上がるとこれまた丁寧に拭き上げられた。 時々感じる所を掠めていくのはワザとだと思う。 「お前の考えてることなんて、お見通しだったよ。」 事も無げに言われ、やっぱりこの(ひと)には敵わないと心から悟る。 俺の愛する番には、俺の思うことなんて全てバレているんだ。 それでも黙って俺のすることを責めもせず咎めもせず、黙って見守ってくれていた夫。 そうだった…俺が結婚式をやるのが嫌で渋っていた時も『どんなお前でも愛してる』って言ってくれた… 「お腹空いたよ!早く食べさせてくれないか? あっ!唐揚げもあるっ!」 キッチンにやって来た継が、うれしそうに声を上げた。 我慢できなかったのか唐揚げを一つ摘み、目を瞬かせた。 「詩音、この味…」 「お義母さんに教えてもらったんです。 継が大好きだからって…」 破顔した夫は俺にキスをするとささやいた。 「後でちゃんと仲直りしような。」 それが何を意味するのか想像して、全身がぼふっと火を吹いたように真っ赤になった。 美味い美味いと二回もお代わりをして、満足気に笑う継を見ながら、この後の『仲直り』はちょっと怖いけど、溺愛も案外良いものだと思っていた。 そしてその夜…想像通り、ゆっくりとたっぷりと愛されたのだった…

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