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こんにちは赤ちゃんside:潤⑥
看護師以外誰もいない空間に、俺とお袋と長椅子に座っている。
時折、微かに他所 の赤ちゃんの泣き声が聞こえ、右京は大丈夫なんだろうか、俺ももうすぐパパなんだな…とぼんやりと考えていた。
「あー…ドキドキする…
ねぇ、潤。俺、“おばあちゃん”なんだよ!?
うわぁ…どうしよう…
あ、でも“おばあちゃん”とは呼ばせないよ!
“まーちゃん”って呼ばせるからねっ!」
お袋が、きゃいきゃいとはしゃいでいると、エレベーターから降りてきたのは…親父!?
「あっ、パパ!来てくれたの?うれしいっ!」
お袋が飛んで行って、親父に纏わり付く。
ケッ。
こんな所でこんな状況でイチャイチャすんな。
不機嫌さが態度に出たのか、それを察したお袋がさりげなくすっと親父から離れた。
「右京君、破水したんだって?」
「あぁ。一時間くらいって言ってたから、多分そろそろだと」
オギャー オギャー!
「「「生まれたぁっ!!!」」」
♫ハッピーバースデー トゥー ユー
途端に流れ始めた誕生日の音楽。
生まれた…俺と右京の子供が…
右京と出会ってから、愛し合って共に過ごしてきた日々がぐるぐると蘇り、感無量で、立ち上がったまま動けない俺の背中をお袋が引っぱたいた。
「潤、しっかりしなさいっ!
アンタ、父親になったんだよ!」
痛い……一撃で現実に引き戻された…
間もなく、中に呼ばれた。遂にご対面だ!
「おめでとうございます。母子ともに元気ですよ!
元気なαの男の子ですよ。しっかり抱っこしてあげて下さいね。」
ぎこちない両腕に小さな重みが加わった。
俺の…子供…愛する右京との…
みぃみぃ子猫のように泣くその子は、しっかりと息をして元気に泣いていた。
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