542 / 829
こんにちは赤ちゃんside:潤⑦
右京に似てるな…
これはイケメンになるぞ。
人差し指をそっと小さな手にあてがうと、思いの外強い力でぎゅっと握り返してきた!
そうだよ、俺が君のパパだよ。
今日からよろしくな。
強く逞しい子に育てるから、覚悟しなよ。
そして
「生まれてきてくれてありがとう。」
とささやいた。
横からお袋が
「潤、早く抱っこさせてー!」
とせがんできて、奪い取られた。
くそっ。
親子の対面の邪魔をするなって!
まぁ、初孫だ。仕方ないか。
親父とお袋で賑やかに対面している間に、看護師さんに
「すみません、右京は?右京は無事ですか?
すぐに会えますか?」
と聞くと
「はい、大丈夫ですよ。
今、切開した後の縫合中ですので、それが終わればお会いになれますよ。
待ち遠しいですよね。
あと一時間くらいしたら病室にも戻れます。
処置が終わったら一度お声掛けしましょうか?」
「ぜひそうして下さい。お願いします。」
「承知しました。
では、赤ちゃんお預りしますね。」
赤ちゃんを連れて戻っていく看護師さんを見送りながら、どっと疲れが出てへたり込んだ。
「…やだ…潤。泣いてるのか?」
お袋に言われて頬を拭うと、冷たいものに触れた。
「…あ………」
親父が俺の肩をぽんぽんと叩いて言った。
「俺も、お前達が生まれた時、号泣してな。
あれはちょっと恥ずかしかったぞ。」
親父…
こんな思いをして俺達を迎え入れてくれたんだな。
改めて親父とお袋に感謝が溢れ出した。
自分が親になって初めてその思いが分かると聞いていたが…
俺はゆっくりと立ち上がると、きちっと背筋を伸ばしてお辞儀をした。
「親父、お袋…俺達をこの世に送り出してくれてありがとうございました。」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!