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こんにちは赤ちゃんside:潤⑨
ストレッチャーに乗せられた右京の手を握ったまま移動する。
「右京君!」
回復室を出た途端、お袋が飛んできた。
「おめでとう!よく頑張ったね!
かわいい男の子だよ。右京君にそっくり!
ゆっくり休んで。
また顔見に来るから。」
「…お義母さん…ありがとう。」
「右京君、頑張ったな。偉かったぞ。」
「…お義父さん、ありがとう…」
「俺、右京の側にいてやりたいから。
先に帰ってて。」
「わかったよ。ちゃんと見てあげてね。」
「うん。親父、お袋、ありがとう。」
その場で別れて個室に入った。
看護師さんも出て行って、やっと二人っきりになれた。
「…右京…疲れてるだろう?俺、側にいるからゆっくり休んで。」
「…潤…ありがとう…」
キスをしてやろうと顔を近付けたその時、ノックの音がした。
誰だよ…怒鳴りつけたい気持ちを押さえて答えた。
「はい。どうぞ。」
ゆるっと入ってきたのは香川先生だ。
「おめでとうございます。元気な男の子だよ。
右京君も元気そうだし。良かった良かった。」
先生には怒れない…
「先生、ありがとうございました。」
「右京君、もし、少しでも具合が悪いと思ったら、遠慮なくナースコール押してね。
麻酔切れたら痛くなると思うし。
痛み止めもあるからね。無理しないで。」
「はい、先生、ありがとうございました。」
「いいえ、どう致しまして。
右京君と赤ちゃんが頑張ったからだよ。
ところで潤?」
「はい。」
「そんなに心配なら今日ここに泊まるかい?」
「え?いいんですか?」
「個室だからね。それにそんな“帰りたくないオーラ”出されたら、帰れとは言えないよ。
ただし、エッチは絶対厳禁だからね!」
「…先生…いくら俺でもそんなこと!」
あははっ と大笑いした先生は、テキパキと泊まりの準備をしてくれた。
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