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祝福①
継とご飯を食べようとした時だった。
けたたましく継の携帯が鳴り、何事かと画面を見た継は
「…お袋だ。何だよ…」
と言いながら、通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『けーーいっ!産まれたっ!産まれたよぉ!
右京君、赤ちゃん産まれたっ!』
「…耳痛っ…ホント?で?どっち?男?女?
右京君、無事?」
継は矢継ぎ早に問い掛け、マイクモードにした携帯からは、興奮したお義母さんの声が聞こえてくる。
『男の子!めっちゃイケメン君だよ!
右京君も元気!あー、良かったぁ…
取り急ぎ連絡しておこうと思って。
詩音君にも伝えてね。
今から、詩音君のご実家にも連絡するから。
でもね、丁度、俺と潤がいる時で良かったんだよ。
右京君、先に破水しちゃってね、すぐに病院へ連れて行って、即手術だったんだ。
だからさ、継と詩音さえ良ければ、そろそろ家に来ないか?ここからなら病院も近いし、その方が安心なんだけど。
二人で相談してみてよ。
じゃあねぇー!』
怒涛の電話が切れた。
「耳がキンキンする…」と継は笑いながら
「聞こえただろ?あんなデッカい声で…無事産まれたって。めっちゃイケメン君だってさ。
きっと右京さん似だな。
詩音の家にも電話するそうだ。
あぁ…良かった…
落ち着いたら赤ちゃん見に行こうな。」
「はい!良かった…右京さん、一足先にママになったんだ…」
「次は詩音だな。」
継が優しく微笑んだ。
「はい。でも…」
「『でも』?」
「…ちょっぴり怖いです…」
「俺がついてるから大丈夫だよ。さ、食べよう!」
ぽんぽんと頭を撫でられ、髪の毛にキスされた。
頷いて箸を進めるが、一抹の不安がよぎった。
継やお義母さんがいない時に一人で産気づいたらどうしようか…
その時の俺は、ただ不安ばかり先走って怖がっていたのだった。
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