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祝福③
side:継
お風呂を出たての、ほこほこの詩音。
全身ほんのりと赤くなり、俺とお揃いのシャンプーの匂いがする。
さっきの、晩飯 の何気ない会話がリピートしてきた。
纏わり付きたくなるのを必死でセーブして、何でもない風でご飯をよそってやったんだ。
「継…こんなに食べれません…」
「二人分だろ?ちゃんと食べて…ね?」
詩音は唇を尖らせて茶碗を受け取ると、ご飯を少し戻した。
「…自分の分しか食べれないです。」
それでも何かしら構いたくて堪らない。
「ごめん、ごめん。
じゃあ、食べさせるからここに来て?」
ポンポンと腿を叩くと、嫌々な素振りでやって来た。
よいしょと膝に乗せて
「ほら、詩音、口開けて…あーん。」
ぽっ と頬を染めて素直に口を開ける詩音。
ここまで“躾る”のに、どれくらい時間が掛かったか…今では割と抵抗もなく、俺の言う通りにしてくれるのだが。
もぐもぐと食べる様子が何とも愛くるしい。
すると詩音は
「はい、継も!…あーん。」
今度は俺が真っ赤になる番だった。
「え!?あっ、あぁ…」
大きく口を開けると、うれしそうに口に入れてくれる。
うん…幸せだぁ…
満足して食べさせ合っていると
「…赤ちゃんのお祝い、何がいいかな…ねぇ継。何にしましょうか?
必要な物は、全てお義母さんが揃えて下さってるんです。」
「そうだな…取り敢えず現金と…
詩音の体調が良ければ、明日見に行こうか。
午後から抜けれるから。」
「本当に!?うれしい!
…でも、継…お仕事中はダメです!
定時で上がってからの方が俺はゆっくりできていい…」
ちろん と咎めるような上目遣いの詩音に、ムラムラを必死で押さえつつ
「そっ、そうだな。仕事中だもんな。
…わかった。定時で上がるから、それから行こう。
そのまま、明日は外で晩御飯だ。いいね?」
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