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ユルい相談①

side:潤 子供が生まれて一週間経った。 毎日病院に通い、新生児室のガラスにへばりついて我が子を確認し、右京に纏わり付いてはウザがられている。 「…潤…その締まりのない顔、何とかしてよ。 曲がりなりにも一家の(あるじ)。 この子のパパなんだよ!? 本当に…もう。」 授乳しながら右京が文句を言う。 「何とでも言ってくれ。 今の俺は幸せ過ぎて爆発しそうなんだ。」 そう返して、一枚の絵画のような父子(ぼし)像を涎をタラさんばかりに崩れた顔で眺めている。 チビ助は、少しぷっくりと膨らんだ胸に手を添えて、んくんく とお乳を飲んでいる。 「かわいいなぁ…俺もおっぱい飲みたい…」 思わず(ひと)()ちた途端 バシッ と頭に衝撃が走った。 「痛っっ!!!」 真っ赤な顔で俺を睨みつけ、スマッシュした後のように手を振り下ろした右京がそこにいた。 「…潤…スケベ。」 (はた)かれた頭頂部も痛かったが、それ以上に蔑むような視線が痛かった。 「…だって…右京…」 俯いて涙ぐむ俺。 右京はそんな俺を無視して授乳を続け、たらふく飲んでゲップも終えたチビ助に何か呟き、そっと寝かせた。 お腹が満たされて満足したのか、チビ助はくぅくぅと また眠ったようだ。 「潤…」 呆れたような声音にびくりと身体が跳ねた。 叱られる。嫌われた。どうしよう。 次の瞬間、ふわりと優しい匂いが俺を包んだ。 「うっ、右京っ!?」 「…潤…いい子だからもう少し我慢して。 退院して暫くして、香川先生の許可が出たら…その時は…ね?」 抱きしめられて、さっき叩かれた所を優しく撫でられながら、優しく耳元でささやかれると、それだけでイってしまいそうになる。 「右京…」 天使だ…俺の右京はやっぱり天使だ。

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