553 / 829
ユルい相談②
目に涙が溜まってくる。
泣くな。潤、男だろ?夫だろ?父親だろ?
うっすらと浮かぶ涙。
その目尻を右京の細い指先で優しく拭われる。
「泣くなよ、パパ。」
ハッ!
そうだっ、そうだよ!俺、もうパパなんだ!
「ねぇ、優 …泣き虫のパパは困りますよねぇ…」
右京は仰向けで眠る我が子を覗き込み、そう呼び掛けると、また俺の方を向いて言い放った。
「しっかりしないとこの子と家出するぞ。」
それを聞いた俺の背筋はシャンと伸びた。
「わっ、分かったっ!」
瞬間、涙も引っ込み、勃ち掛けた熱い股間の熱も一気に冷めた。
「右京っ!おっ、俺っ」
トントン
…何というタイミングで…誰だ?
「はい、どうぞ!」
躊躇なく招き入れる右京。
おいっ、俺は まだ涙目なんだぞ!
スライドされたドアから、ひょっこりと二つの顔が…
「詩音君!継君!」
「お義兄さん、右京さん!おめでとうございますっ!」
「何だ…兄貴いたのか…右京さん、おめでとうございます。赤ちゃんは?」
「ありがとう。ここにいるよ。」
二人は恐る恐る近付くと、眠る優を覗き込んだ。
そして顔をくっ付けて、ひそひそと ささやき合っている。
「うわぁ…小さい…かわいいっ!
…お義母さんの言う通り、右京さん似のイケメン君だぁ…」
「よく寝てる…寝る子は育つぞ。
うん、かわいいなぁ…赤ちゃんってこんなのかぁ…」
「見てて飽きない…かわいい…」
「詩音、もうすぐ俺達の元にも…」
「継…早く会いたいですね…」
「詩音…うん、そうだな。」
おい、バカップル!
病室で盛るな!
そんな二人を俺の聖母が優しい眼差しで見つめている。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!