556 / 829

ユルい相談⑤

やがて がっくりと肩を落とし、項垂れた俺達は、どちらからともなく 「…じゃあ、誰に相談する?…香川先生?」 「アレはダメだよ…完全に伊織さんに尻に敷かれてる…伊織さんに一喝されて、泣きながら耐えてると思う。 ダンナの攻略法を伊織さんがうちの詩音に教えてるくらいだから。 多分右京さんにもな。」 「…うーっ…何てこった…じゃあ、誰だよ。」 「…んー…篠山さんは?」 「あの人は“ヨメ命”だから、ヨメには逆らわない。 ひたすら我慢してそう…」 「そうだ、中田!中田に聞こう!」 「アイツもヨメにいいように言いくるめられてるタイプだぞ。 きっと一人寂しく処理するタイプだ。」 「一番聞きたくないけど…まさか…親父?」 「んな、馬鹿な!…俺は嫌だな… ありゃあ、完全に尻に敷かれて手綱を取られてる。アテにならねーよ。 …いや、待てよ… だからこそ、香川先生以上に我慢させられて、欲の散らし方を熟知してるかも。」 「…親父かぁ…確かに、お袋と長年連れ添ってるんだからな。 …筋金入りだよ。 “嫁自慢大会”の時だって、親父の話によると、お袋だって満更でもなさそうなんだけどな。」 「うーん…仕方ない…親父に聞いてみるか… あんまり気がノらないけど。」 「そうだな…帰りに寄って聞いてみるか… 詩音もお袋に会いたいだろうし。話してる間に親父に相談…っと。」 他人様(ひとさま)の家庭生活を 勝手な憶測と妄想で終了した俺達は、取り敢えず親父に簡潔に相談事を伝えアポを取り、病室へ戻った。 廊下を歩きながらボソボソと継に愚痴った。 「親父…今にも吹き出しそうだった… あー…帰ったら絶対バカにされる…」 「兄貴…巻添え食らわせてすまないな…」 「…いや、お互い様だろ…」

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!