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ユルい相談⑥

どんよりとした雰囲気のまま、そっとドアを開けると、愚図る優をあやしながら女神のような微笑みをたたえ、詩音君と話す愛しい番の姿が目に入った。 丁度そこへ、少し空いたレースのカーテンの隙間から、柔らかな光が一直線に差し込んだ。 あぁ…神々しい…そこだけスポットライトが当たってるみたいだ… 贔屓目じゃない。 綺麗だよ、右京…美しくて崇高だ… 入口からフリーズして動かなくなった俺の肩越しに、訝しんだ継が覗き込んだ。 「うわっ…凄い…中世の絵画みたい…」 継はボソリと呟くと、俺を引っ張ってドアを閉めた。 「兄貴…ダメだよ。 あんなの見たら、手ぇ出せねーだろ? 右京さんと詩音が重なって見えた… 次元が違う…邪な気持ちが吹っ飛ぶよ…」 「…本当に吹っ飛んだのか?」 継は、首を横に振り真顔で答えた。 「やっぱ、無理。」 まるでコントみたいな答えに、ガクリと力が抜けた。 「何だよ、お前…まぁ、いいや。 とにかく、親父に聞こう。な?」 無言で、こくこくと首を縦に振る継の頭をぽんぽんと撫で、もう一度部屋へ入った。 右京とは「一度帰って、洗濯物持ってまた来るから。」とキスして別れた。 辛い。 ひと時でも離れたくない。 それなのに右京は 「ここで自分でできるからいいのに。 今日はもう、帰ってゆっくりして。」 と、素っ気ない。 尻尾の垂れた犬のように、ちょっと涙目で家に向かう。 情けない。 後ろから、継の車がついてくる。 俺だけ…俺だけ、こんなに右京のことを思ってるのか? 右京の気持ちは、全て優に取られちまったのか? 分かってるよ。身体も心もクタクタだって。 出産って命懸けなんだって。 でも…でも… そうこう思っているうちに到着してしまった。

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