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ユルい相談⑦

詩音君に抱きつくお袋とそれを引き剥がそうとする継を横目で眺めながら、親父の部屋をノックした。 「どーぞー」 親父がコーヒーを飲みながらゆったりと寛いでいた。 「何だ何だ、新米パパさんが そんな顔をして… ほら、座りなさい。」 程なくしてコーヒーを持った継が入ってきた。 「「親父……」」 「うん。俺も辛かったよ。 生まれる前も…もしヤり過ぎて、何かあったら一大事だ。 程々に、と言われても…そこは…なぁ。 出産後だって相手はお腹を切って命懸けで自分の子供を産んでくれたばかりで、身体も元通りじゃない。 赤ちゃんは四六時中泣くから世話しなきゃならん。 睡眠不足と経験不足で、メンタルもやられる。 自分と子供のことで精一杯なんだ。 そんな時に、ダンナの相手までしてられるか?」 余計な話はせずに、どストレートの豪速球が返ってきた。 「子供に意識が全部向くのは仕方がないんだよ。 しばらくの我慢さ。 お前達はそれぞれ運命の番と一緒になってるんだから。 お前達のことを嫌いになった訳じゃないんだ。 子供のことが第一になって、お前達を構う余裕がないだけなんだよ。 香川先生の所で、抑制剤を調合してもらうといい。 それで大方落ち着くよ。 それでもダメなら、自分のことは自分で始末する。 これしかないな。 浮気なんて絶対に何があってもダメだからな! しようもんなら、離婚を覚悟しとけよ。」 はぁーーーっ 継と同時にため息をついた。 「親父…分かってるんだよ。分かってるんだけど、『ウザい』とか『面倒くさい』とか言われてみろ。 『しっかりしないと家出する』って… 俺も凹むよ。」 思わずボヤいた。 親父は笑いながら 「実際…潤、お前、しつこいもん。 そりゃあ言われても仕方ないよなぁ…」

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