562 / 829

嫁姑…①

「だからねぇ、そろそろ こっちに来たらどう? 継がいない時に何かあってもすぐ対処できるから… 詩音君もその方が安心じゃない? 空いてる部屋はいくつもあるから…」 「俺も詩音君がいてくれた方が気が紛れていいんだけどな…」 「ここからの方が病院に近いし、かーちゃんのご飯も食べれるぞ?」 「継だって、詩音君一人にしといたら気になって気になって、仕事にならないだろ? 俺達のことは気にしなくていいから、詩音君とチビちゃんのことを一番に考えてやれよ。」 麻生田家のみんなから、口を酸っぱくして言われ、思いっきり甘えて産後落ち着くまで、お世話になることになった。 両親も兄夫婦も『帰っておいで』と何度も言ってくれた。 その言葉に、実家へ…とも思ったけれど、実質兄夫婦がメインで暮らしていて『もう、俺がいた頃の“俺の家”じゃない』と、頼ることを何となく憚られて… それに、継も自分の家の方が甘えられていいと思って… という訳で… 「今日からお世話になります! ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い致します!」 ぐい、ぐにっ はい、チビちゃんもご挨拶完了。 満面笑顔の四人プラス、右京さんの腕の中で くぅくぅと眠る優君に迎えられた。 継の部屋だった所に必要な荷物を運び込んだ。 お義父さんは、事前に大きなベッドに替えてくれていた。 「お義父さん、わざわざありがとうございました。」 「丁度、あのサイズを欲しがってる人がいてね、譲ったんだ。 だから、気にしないでいいんだよ。 疲れただろ?さ、ゆっくりしなさい。」 「はい!何かとすみません…」 そこへ、パタパタと右京さんがやって来た。 大音量で泣く優君と一緒に。 「ダメだぁ…優、泣き止まない… お義母さん、何でぇ?」 右京さんも半ベソだ。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!