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嫁姑…②
「おやおや、王子はご機嫌斜めなの?」
「お腹も足りてる、オムツも替えた。
抱っこもしてる。
だけど…ぐすっ…何やってもこの有様で…
不機嫌なカラーが全身から…ぐすっ…」
「はいはい。さぁ、まーちゃんのところにおいで…
熱もないし、汗もかいてないし…ただ単に泣きたい気分なのかな?」
お義母さんは泣き続ける優君を受け取り、寝かせて一旦服を脱がせ始めた。
そして全身を触っていたが、お腹に手を当てた時に その動きが止まった。
うんうんと何度か頷いて、ゆっくりと円を描くように、お腹のマッサージを始めた。
その動きはとても優しくて、俺達は黙ってお義母さんを見つめていた。
泣いていた優君の声が段々と小さくなり、顔を真っ赤にして いきみ始めたように見えたその時…
ぶおんっ!
大音量と共に…出たのだ。
出し切った感の優君は満足気に笑っている。
部屋中に漂う臭いに、誰からともなく笑い声が巻き起こった。
「あははっ…そうか、詰まってたんだな、優。
しっかし、大人顔負け…お前、大物になるぞ。
詩音君にはちょっとキツイ臭いだよな、ごめんね。」
お義兄さんが、ひぃひぃ笑いながら言った。
俺は、右京さんの奮闘ぶりと、お義母さんの鮮やかな解決法に、ただただ感動して
「いいえ…右京さんも、お義母さんも凄い…
俺もちゃんと子育てできるかな…」
「「大丈夫!!」」
お義母さんと右京さんに即答された。
「何でも初めからできる人なんていない。
悩んで泣いて、考えて、試して、また失敗して…それの繰り返しで経験を積んでいくんだ。
右京君には右京君、詩音君は詩音君なりの子育てがある。
心配事は俺に言っておいで。
ちょっぴり先輩の右京君もいる。
だから、大丈夫。」
お義母さんは魔法使いだ。
その言葉に、見る間に元気になってくる。
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