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嫁姑…⑤
世間の嫁姑は仲が悪いと聞く。
嫁は『大事な息子を盗 った憎らしい存在』らしい。
気に入らないから、何かと衝突する。
それを堂々と表立って打つけてくる人もいれば、目に付かぬように陰険なやり方で虐めてくる人もいる。
お義母さんは…
全然そんな素振りもない。
いつも優しくて温かくて、ワクワク感満載のいい匂いしかしない。
俺は、拒絶や非難の匂いを嗅いだことがない。
もちろん、右京さんからも。
超嗅覚を厭わしく思ったこともあったけれど、人間関係が密になると、やっぱりあって良かったかな、なんて思っている。
「…お義母さん…聞いてもいい?」
「なーに?」
「お義母さんのお姑さん…継のおばあちゃんって、どんな方だったんですか?」
お義母さんは目をまあるくすると、ふぅーっ と息を吐いた。
「先にこれ持って行ってから話すよ。
ちょっと待っててね。」
運ぼうとする俺をウインクで制して、二人分の湯呑みとおやつを残して行ってしまった。
聞いたらマズかったんだろうか?
お義母さんからちょっぴり戸惑いの匂いがした。
…初めての匂いにびっくりした。
どうしよう…調子に乗って聞かなきゃ良かった…
「お待たせーっ!
優君もご機嫌で寝ちゃったから、右京君も連れて来ちゃったぁ!」
自分の分の湯呑みとお菓子をキープしてきた右京さんは、ニコニコで
「お邪魔しまーす!
もう、抱っこで肩凝っちゃって…潤もしつこいし逃げて来たよ…あははっ、お義母さん、息子の悪口ごめんねー!」
「はははっ!いいんだよ!
…しつこいのは、どうやら家系みたいだし。
優君もそうなるかも…」
「やだぁー!」
あははっ
「さて…お姑さんの話だよね。」
お茶をひと口飲んでお義母さんが話し始めた。
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