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嫁姑…⑥

「元々、この麻生田家は地元の大きな地主でさ、絶対的αが生まれる血筋だから、自然と地域の人達から特別視される…そうなっていったんだろう。 そんな家に嫁いできたお姑さん…真理子さんは、αだったんだ。 世が世なら、お(ひい)様として扱われるくらいの、やんどころない家の人だから、とにかくワガママで大変だった。 当時は実家から連れてきたお手伝いさんが何人もいたからね。 家事なんてやったことがない、それこそ『お箸より重い物は持ったことがありません』って感じだった。 パパのことも跡取りとして大切に大切に育ててきた。 結婚相手も自分が決めたαをと思っていたのに、番になったのが俺。 運命の番だったんだもの。 結ばれちゃったのは仕方がないよねぇ。 しかも真理子さんが大っ嫌いなΩ。 Ω蔑視の強い家で生まれ育ったから、それはもう酷かったよ。 とにかく、俺がやることなすこと、存在そのものが気に入らないから、作った食事は投げ捨てられる。 掃除も洗濯も毎回やり直し。 フルで仕事して、家のことしてもそんな調子で。 それも、おじいちゃんやパパの目の届かないところでね。 それは見事な虐めっぷりだったよ。 見兼ねたお手伝いさん達がこっそり手助けしてくれてさ。 最初は『そんなもんなんだ』って思ってた。 俺の様子が段々とおかしくなっていくのにパパが気付いてくれて、全力で俺を庇って守ってくれた。 あまりの仕打ちに腹を立てたパパが、結婚後すぐ家を出て別々に暮らしてくれたんだ。 それがなかったら、俺は完全におかしくなってた。」 そこまで話すとお義母さんは、ふうっ と息を吐いた。 右京さんと俺は、お義母さんがそんな大変な思いをしてきたことに驚いて、黙ったままだった。

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