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嫁姑…⑦

「折々には顔を出し会いに行くけれど、まるで汚い物でも見るかのような目で見られ、ひとっ言も口を聞いてもらえない。 それでも義理を欠く訳にはいかない。 『Ωって、そんなに悪いのか? 俺って生きていたらいけないのか?』 そんな風にも考えた。 でも、潤が生まれ継が生まれ、お義父さんが亡くなって、会社も軌道に乗って俺達の生活は慌ただしくも安定して… 真理子さんの身の回りの世話をずっとしてくれていたお手伝いさんも、一人、また一人と辞めていって。 そういう人だから、新しい人が来ても続かない。 真理子さんも年を重ね、少し寂しくなってきたのかな。 ある日『真澄さんに面倒をみてもらいます。』って勝手に宣言されちゃった。 パパは、こっ酷く突っぱねたんだけど、それを制して俺が受けた。 覚悟を決めたんだ。 どんな人でもパパを生んでくれた人だって。 その頃には子育てに専念させてもらっていたから、毎日家と実家の往復さ。 相変わらず口は聞いてくれないけれど、食事はしてくれるようになった。 最初は捨てられてたけどね。 でも、お腹空くじゃん。俺以外誰も作らないし、自分で買い物なんてするわけないもの。 仕方なく食べてたよ。 それから半年程した雪の降る大寒の頃、真理子さんが風邪をこじらせて寝込んでしまったんだ。 食欲がなくて何も受け付けなくなった。 『何か食べたい物はありませんか?』 って聞いたら 『バニラアイス』 って。 メーカーを聞いても答えてくれないから、片っ端から買い集めて食べさせた。 どれもひと口食べてひと言。 『違う。』 ほとほと困って、お手伝いさんのツテを頼って、辞めた年配の人に聞いてみたら 『きっとお若い頃に召し上がってた手作りのアイスのことですよ。』 って。

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