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嫁姑…⑨
パパに
『自宅での介護は想像以上だ。寝たきりになったら、今より余計に大変だ。
これ以上真澄に負担をかけることはできない。
まず自分の身体のことを考えてくれ。
お前、いつ倒れてもおかしくないんだ。
無理させて本当にすまない。
今まで本当にありがとう。
子供達も我慢の限界にきている。
ちゃんとした施設に入れるから、時々会いに行ってやってくれたら、それでいいんだ。』
って。
その時の俺は、今より十キロ以上痩せこけて、自分では分からなかったんだけど、過労で入院寸前の状態だったらしい。
施設に入った真理子さんはワガママも言わずに大人しくて、時々会いに行く俺達を笑顔で迎えてくれた。
そして
臨終だと呼ばれて、パパと潤と継と俺と大慌てで駆け付けた。
他の親戚は間に合わなかった。
もう、意識も混濁してて、パパが
『お袋、お袋!俺だ!』
って呼び掛けても、ぼんやりとした目で
『どちら様ですか?』
って。ずっこけてたよ、パパ。
次に俺が手を握りしめて呼び掛けた。
『真理子さん!真理子さん、しっかり!』
ぱっと目を開けて俺を見つめると、ポロリと一筋涙を流して
『真澄さん、今までごめんね。
…本当にありがとう。』
それが最後だった。
意地悪されて恨んだこともあったけど…
俺の思いは伝わってたんだ。
大変なお姑さんだったけど、お陰で料理の腕は格段に上がったし、度胸もついた。
自分がされて嫌なことは、他人に絶対にしないって信念を持てたし、どんな人にでも優しくなれた。
真理子さんのお陰なんだ。
最後には分かり合えたけど、そんな無駄な時間を過ごしたくない。
潤と継にお嫁ちゃんが来たら、絶対に仲良くしたい。
俺のような新婚生活は味合わせたくない。
一緒に笑って、楽しんで、辛かったら泣いて、怒って。
本当の家族みたいにしたい。
ずっとそう思ってきたんだ。
だから、右京君と詩音君がうちに来てくれて、本当にうれしい!」
お義母さんの目が涙でキラリと光った。
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