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マタニティブルー①

チビちゃん…仁を抱っこする度に、その重みに温かさに愛しさが溢れ、泣きそうになる。 最初はおっかなびっくりだった抱き方も、ちょっとずつ様になってきた。 その小さな手に指をあてがうと、ぎゅっと握りしめてくる。 こんな俺を全身で頼ってくれているようで…うれしい。 継は、出勤前に顔を出し、昼休みに覗きに来て、仕事が終わるとまた飛んでくる。 一体いつご飯を食べてるんだろう。 ちゃんと仕事してるんだろうか。 篠山さんに迷惑かけてない? 咎めるような視線にも『大丈夫』と自信満々な態度を取るので、それ以上は何も問い詰めない。 俺も継の顔を見ると安心するから『そんなに来ないで』なんて、絶対に言わない。 日中は、お義母さんがあれこれと世話を焼きに来てくれる。 俺が疲れない程度に調整して。 流石お義母さんだ。 時々訪れる授乳室では、静かな時間が流れている。 みんな我が子に夢中で、挨拶程度にしか会話はない。…ここにいるママ達はΩなんだろうか。 不必要に近付かない関係が、人付き合いの苦手な俺にはありがたかった。 俺は日中、なるべく仁と部屋で過ごすようにした。 でも…あまりに静かだと『本当に呼吸をしているのか』と不安になり、上下する胸を見つめてはホッとする…というのを繰り返していた。 少しでも母乳を飲まないと、心配になって泣きそうになった。 神経が過敏になってるのが、自分でも分かる。 俺…おかしい? 仁のこと、大切にかわいがらなきゃと思えば思う程、不安と心配が募る。 ゲップしない、どうしよう…とか、体重増えてるのか、ご機嫌はどうなのか… いろいろ考えてしまってどうしていいのか分からなくなってきていた。 眠りたいのに眠れない。 毎晩、一人で泣いていた。

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