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マタニティブルー③
優しいお義母さんの匂いに包まれていると、どうしてもあの気持ちを吐き出したくなった。
ぎゅっと抱きついたまま
「…お義母さん、聞いてほしいことが…」
「うん、何でも聞くよ。言ってごらん。」
「…俺、優君のバースがαだって聞いた時…羨ましかった。
……嫉妬…した。
仁のバースがαだと分かった時に、ホッとしたんだ。
『良かった、αだった』って。
『Ωじゃなくて良かった』って。
もし、仁がΩだったら、俺、本当にうれしかったんだろうか。
Ωだったら、愛せたんだろうか。
そんなどろどろした汚い思いが湧いてきて、せっかく俺達のところに来てくれた仁に申し訳なくって、辛くって…」
言葉が詰まってそれ以上言えなくなった。
お義母さんは俺を抱いたまま、優しく背中を摩ってくれていた。
「…うん。Ωはみんなそう思うよね。
自分が辿って来た同じ道を歩ませたくない。
同じ思いをさせたくない。
だから…Ωとして生まれてきてほしくない。
そう思うのは親として当然のこと。
俺もそうだった。二人とも生まれるまで気が気でなかった。」
継が言った通り…お義母さんも?
「でもね、詩音君。
子供は親を選んで生まれてくるんだって。
この両親の所なら、絶対に愛してくれるって。
だから、心配しなくても大丈夫。
例え仁君がΩだったとしても、詩音君は仁君をちゃんと愛して育てるよ。
そうだ!今度右京君にも聞いてごらん。
同じようなこと言って泣いてたことがあったから。」
え…
コンコン
ノックの音と共に継が飛び込んできた。
「しおーーーんっ!…って…お袋?
お袋、何 詩音を泣かせてんだよっ!」
お義母さんから、べりべりと俺を引き剥がし、隠すように抱きしめた継が威嚇している。
「違うっ!違うのっ!違うったら違うのっ!」
継の胸をどんどんと叩いて叫ぶ俺を継は ぽかんとした顔で見つめている。
「…詩音?」
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