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マタニティブルー④
継はびっくりして俺を抱きしめる力を少し緩めた。
「しおーん?」
ふえっ、ふえっ…ふぎゃぁーーーっ
俺の声に驚いたのか、せっかくお利口さんで寝ていた仁が泣き出してしまった。
「ありゃりゃ、仁君。お目覚めかな?」
お義母さんが仁を抱き上げた。
なかなか泣き止まない仁に
「ママじゃないと嫌だって。」
笑いながら仁を俺にバトンタッチしたお義母さんは
「小腹が空いたから、何か買ってくるよ。
継!荷物持ちにおいで!
詩音君、ちょっと行ってくるね!」
と、目を白黒してる継を連れて出て行った。
ひとり残された俺は、仕方なく泣いている仁の背中を優しくトントンしていると、やがてまた眠ってしまった。
『ママじゃないと嫌だって』
お義母さんに言われた言葉がリピートする。
仁、俺を…俺達を選んでくれてありがとう。
こんな、こんな情けないママだけど、よろしくね。
仁の頬っぺたに自分のをくっ付ける。
あったかくていい匂い。
お義母さんは…俺から虹色のオーラが見えるって言ってた。
仁も、俺から受け継いだ美しいオーラ、って。
その美しいオーラをくれたのは、俺のお母さん…
俺はΩだけれど、ちゃんと美しいものを繋いでこれてるんだね。
バースにとらわれ過ぎているのは俺だった。
麻生田の家族みんなが『どっちでもいい』って言ってくれてるんだから、それでいいんだ。
俺達を選んで宿って生まれてきたこの子に、心からの『ありがとう』を伝えよう。
もし、もし、また子供が授かることがあっても、その子のバースが何であれ『ありがとう』って言える自分でいたい。
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