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マタニティブルー⑦
継の言葉に、次々といろんな人の顔が浮かんだ。
お義母さん、お義父さん…右京さんにお義兄さん…
実家の両親に、兄さん、義弘さん。
姉さんに昇さん。
香川先生と伊織さん…篠山さんと奥様…
中田部長に柚月さん…会社の人達…
…俺、継のお陰で沢山の人達と繋がって、面倒見てもらって助けてもらってる…
今更ながら『ありがとう』が胸一杯に溢れてきて、泣きそうになった。
継の体温が、胸の鼓動が、俺に染み込んでくる。
濃くて優しい匂いに包まれて、幸せな気分に浸っていたが…
「継っ!休み時間過ぎてる!早く会社に戻らなきゃ!」
時計を見てはっと気付き、慌てふためく俺の頭を継は笑いながら撫でると
「優秀な秘書殿が
『連日仕事を早く終わらせたご褒美で、午後から有休です。ごゆっくり。』
って。
だから消灯時間まで今日はここにいるよ。」
微笑む継に、うれしくてまた抱きついた。
継がいてくれる…うれしい…
えへんえへんと咳払いをする継。
不審に思って少し身体を離すと、真っ赤になっていた。
?????
クエスチョンマークが頭を飛んでいた。
「…継?」
継は照れて頭を掻きながら
「…あの…お前の匂いも身体も…俺のアソコを直撃して…ノックアウト寸前なんだ…
…ちょっと…トイレに行かせてくれないか?」
継の言う意味を理解して真っ赤になりながら
「ゴメンナサイ」
とささやいて、そっと離れた。
ちょっと待ってて…と、前屈みになりながら、継が出て行った。
その後ろ姿が何とも言えずおかしくて、かわいくて、愛おしくて…笑ったらまだお腹が痛かったけど…
身体がちゃんと元通りになったら、愛する番の思うがままに、愛し合おうと思っていた。
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