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賑やかな家①
経過も良くて、割合早くに退院できることになった。
継は、香川先生に何かしら お小言をもらってたらしく、少々ご機嫌斜めだったけれど。
薬の入ってるらしい紙袋をダッシュボードに突っ込んでいた。
…敢えてそれには突っ込まないことにした。
お義母さんが仁をベビーシートに乗せてくれている。
「仁君、抱っこは少し我慢だよ。
お家に帰るからね。」
優しく仁に話しかけるお義母さん。
ほのぼのとした匂いが二人を包んでいる。
「右京君がね、詩音君達が帰ってくるのをとっても楽しみにしてるんだよ。」
お義母さんが助手席から少し振り返って答える。
「ホントですか?良かった…
お義母さん、またしばらくお世話になります。
ご迷惑を掛けますがよろしくお願いします。」
「なーに言ってんの!家族なんだから当たり前だろ?遠慮はなし!いいね?
パパもね、うれしくってうずうずしてるんだよー。」
「夜泣きでお義父さんを起こさなければいいんですけど…」
「あははっ!あの人はそんなこと、ぜーんぜん気にしないよ。
…一度寝たら何があっても朝まで起きないから。
優君の大泣きにもビクともしないし、ヘッチャラだよ。」
あははっ
大笑いしているうちに、家に着いてしまった。
ほんの少し前まで仁がお腹にいて…
今日からまた、お世話になりますっ!
「ただいまぁ!」
「詩音君、仁君、お帰りーっ!
ほら、優!仁君だよ!」
少し大きくなった優君を抱っこして、右京さんが玄関で出迎えてくれた。
「右京さんっ!またお世話になります。
ご迷惑を」
「はい!ストップ!
また仲良くしてね、詩音君、仁君!」
優しい兄嫁から、春の日差しのような穏やかで居心地の良い匂いがしてくる。
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