599 / 829
お久し振りね side:潤②
思わず出たお祈りポーズと、縋る瞳を一瞥した秘書殿は
「…承知致しました…
会議の時間を三十分早めましょう。
柴崎社長には早めに来ていただくよう連絡を致します…あの方は余談が長くなるので、先に契約を済ませて適当な所でお帰りを促すとして…
すぐに手配いたします。
では取り急ぎ、この書類を今日中に仕上げていただきましょうか…」
俺がワガママを言うのは、右京絡みのことだとバレている。
有能な秘書殿は、書類を目の前の机の上に、ダン っと積み上げた。
「さぁ、社長。頑張りましょうか。」
明日のお楽しみのためだ!
俺はやる時はやるんだ!
気合いを入れて一気に片付け始めた。
この、冷徹で頭が切れ、オマケに美貌の秘書殿は、その名を『新道 朱里 』という。
女性のαで、年は三十七才。本厄だ。
本人は微妙に気にしているらしい。
三才年上の、溺愛する夫 がいる。
子供は、綺麗に揃ったバースの、男(α)、女(β)、男(Ω)、の三人(やるなぁ)。
右京のことも、よく相談に乗ってもらっている。
夫 様は男性Ω。
気さくで、気配り心配りMAXのよくできた人だ。
フラワーアレンジメントの講師で、花屋で働いていた右京と話が合うらしく、楽しそうにラ◯ンのやり取りをしているのを時々見かけた。
その度に ちょっと焼けた。
新道秘書には、俺がどう転んでも頭が上がらない。
ちょっとお袋に似てるところがあって、絶対に逆らえない。
いつも手の平で弄ばれているような気がする。
「はぁーっ…終わった…」
定刻三十分前に明日やるべき仕事を終えた。
「お疲れ様です。
いつもこのくらい集中して仕事をして下さると、みんな助かるのですけれど…」
ちろん と咎めるような目つきで睨まれた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!