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お久し振りね side:潤③

思わず反論する。 「…いつもやってるじゃん…」 「はいはい。そうですね。 社長は頑張ってらっしゃいますよ。 さ、明日の分は終わらせたんですから、お帰りの準備をどうぞ。 後は私が。」 「片付けくらい自分でするから。 新道さんこそ、定時で上がってよ。」 「ありがとうございます。 では、片付けはご一緒に。」 …やっぱり…上手く転がされている… 早々に帰宅した俺は(何故か継まで早かったけど、アイツは週末のことは知らないらしい。ザマァ)テンションが上がっていて、必要以上に右京に纏わり付いてウザがられた。 それは反省している。 だって…だって…久し振りの二人っきりの“デート”なんだよ!? 否が応でも期待が膨らんで、遠足前の眠れない子供みたいになっていた。 降って湧いたラッキーデーに心踊り、ディナーを何にするかは、一応右京に確認して、ホテルはスイートで、とか一人で盛り上がっていたのだった。 そんな俺を右京は呆れた顔で見てたっけ。 それでも家庭内別居は解除され、くっ付いて布団に潜ると、嫌がらずにキスして寝てくれたのだった。 そんな状態だった昨日。 午前中は上の空で、秘書殿にお尻を叩かれるようにして、取り敢えず仕事をした。 午後からの会議も、いつもの半分の時間で終わらせた。 (みんな首を捻りながら、何か物言いたげだったが完無視した) 柴崎社長の無駄話もカットして、『急な来客があるから』と、うちの優秀な秘書殿がやんわりと追い立て、お帰りいただいた。 凄い。一時間も余裕がある! そわそわと落ち着かない俺に、新道さんは 「社長…月曜日、半休…それとも一日休み取りましょうか?」 と提案してきた。 「えっ!?ホント? …じゃあ…休みちょーだいっ!」 「…はあっ…はい、承知致しました。 その代わり…火曜日、鞭振るわせていただきます。」 ニヤリと微笑むその顔は…地獄の使者のようだった。

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