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お久し振りね side:潤⑧
この日のために選んだのは、国内外に多数の拠点を持つ超有名ホテルのスイート。
普通なら数カ月前から押さえなければならないのだが、幸運なことに丁度キャンセルが出たところだった。
窓からの夜景がロマンティックな部屋で、愛を紡ぐのだ!
チェックインの手続きすらもどかしく、早く右京と二人っきりになりたくて、エレベーターの中でも落ち着かなくてそわそわしていた。
右京は黙って俺に寄り添っている。
くうっ、堪らん。かわい過ぎるよ、右京。
密室の空間に、俺達の匂いがクロスしている。
これ以上、理性が持たないと思った途端に上昇が止まり、ドアが開いた。
そのまま、ずんずんと右京の手を引いて、目指す部屋へ。
カチャ
「うわぁ…潤…贅沢じゃない?
嘘っ。広い。部屋、幾つあるの?」
キョロキョロとあちこちを見て回る右京を窓側に呼び寄せた。
「右京、こっちにおいで。」
「うわぁ………」
一際高い場所から見下ろすと、無数のイルミネーションが煌めき、まるで空に浮かんでいるような錯覚を覚えた。
「綺麗…俺達、星空の中にいるみたいだね。
…新婚旅行思い出しちゃった。」
俺に身体を預けてきた右京の肩を抱き
「あの時は海も見えたな。今日は星空だ。
右京…俺の愛を証明してやるよ。」
そう言って、唇にそっとキスをした。
目を閉じてそれを受け止めた右京は
「その前に、シャワーを…」
「じゃあ、一緒に入ろう。洗ってやる。」
「ダメだよ…」
「どうして?」
「だって…傷跡残ってるし…俺、身体ぷよぷよだから…」
「どんな右京も、右京に変わりはないんだから。
俺に全部させろ。
その傷も…愛させてくれ。」
恭 しく跪いて左手の指輪に口付けた。
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