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葛藤 side:右京②
確かに、確かに大きなお世話なんだ。
普通は他人に触れてほしくない、究極のプライベートの一つだし。
それでも図々しくも、俺から何でも明け透けに話してるし、エッチなこともたくさん相談もしてる。
こんなこと、他人に…ましてや義理の母、潤のことを一番分かってる母親に話してもいいのか、って自分でツッコミを入れながらも。
…詩音君に言うのも憚 られるようなことだって。
お義母さんも遠慮なく自分のことも話してくれる。
…けど、多分、俺は…あてがわれるようで嫌だったんだ。
『自分から言い出したのではない』
“お義母さんから言われたから”ムカついてたんだ。
自分のことを“性の対象としてのΩ”って、思ってしまったのかな…
その時、真理子さんのことを思い出した。
執拗にΩを…お義母さんを排除するお姑さん。
昔はそう簡単に実家に帰れなかった、と聞いたことがある。
誰も頼る人がいない。実家にも帰れない。
何かあれば、夫夫で解決しなければならない。
今の潤と俺は…
潤は俺を愛したくて愛したくて堪らない。
俺はそんな潤に構う余裕もない。
挙句に家庭内別居している。
一緒だ。お義父さんとお義母さんと。
お義母さんは、昔の自分と俺達を重ねて見ているのだろう。
それで
『あの時に誰かの手を借りておけば、あんな辛い思いをお互いに何年もしなくて済んだのに…
目の前に、自分と同じ思いのお嫁ちゃん達がいる。
これは何とかしなければ』
というある種の使命感に燃えて、あんなことを言い出したんだろう。
お義母さんは、マグカップをお盆に置くと、大きな瞳を潤ませて
『余計なことしてゴメンナサイ』
と呟いた。
「…お義母さん…」
マグカップをテーブルに置くと、お義母さんの側に駆け寄り、そっと両手を包み込んだ。
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