611 / 829

お久し振りね side:右京①

その日の夕方。 あり得ないくらい早い時間に潤が帰ってきた。 気持ち悪いくらいに纏わり付いて離れない。 …お義母さん… 昼のラ◯ンの相手は、潤ですね!? ちろん と咎める視線を送ると、目を泳がせてあらぬ方向を向いていた。 ホントに、もうっ! それでも約束通り、家庭内別居は解除した。 どこか納得いかない不満のオーラを滲ませていた詩音君を部屋に誘い、嫁同士で話をした。 詩音君、少しは落ち着いたようだ。良かった… 「右京っ、右京! 明日のディナーは何がいい? 和食?中華?フレンチ?イタリアン? 好きなとこ行くよ!」 「…んー…じゃあ…フレンチで。」 「オッケー!任せて!何処にしようかな…」 潤から止め処なくご機嫌でカラフルな色が発せられている。 こんな色、レスになってから久し振りだ。 そんなにうれしいのか? あの精力絶倫オバケみたいな潤が、ずっと我慢している…確かに…外で“発散”してる様子は感じられない。浮気はないはずだ。 時々、自分で処理してるような色と匂いと『残骸』は見たことあるけれど。 優を寝かしつけて布団に入ると、待ってましたとばかりに潤がくっ付いてきた。 背中に、馴染んだ温もりが伝わり、大好きな匂いに包まれる。 遠慮がちに回された腕を少し避けると、途端に悲しげな声が聞こえてきた。 「右京…」 くるんと振り向いて、唇にそっと合わすだけのキスをする。 「潤、お休みなさい。」 「おっ、おおっ。お休み…」 また元の位置に戻り背中を向けると、ふうっ…とため息を漏らした潤の腕が、そっと絡まってきた。 濃厚な雄のフェロモンが鼻を擽る。 潤の…固いモノが腰に擦り付けられているけれど、敢えて無視する。 それでも…今度はその腕を振り解くことはせずに、潤の匂いと体温を感じながら目を閉じた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!