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お久し振りね side:右京④

到着したのは…俺達が初めてデートしたレストラン! 店内に入り、案内されたのも…同じ席! ここは…無理矢理 番にさせられて、婚姻届を提出してから、潤の実家に行き…お義母さんにボコボコに殴られた潤のアザが消える頃に、『初デートとお祝いだから』と、連れてきてもらったんだ。 こんな所初めての俺に、潤はさり気なくリードしてくれたっけ。 リザーブされるワインも、運ばれてくる料理も全て、あの時と同じ… 感動して、俺の伴侶を見直した。 ジワリと目元も涙で滲んできた。 “今夜は潤が望むようにしてやろう”なーんて思っていたその時。 「あれ?潤?久し振りっ!」 その声に顔を上げると、『かわいい系』の男が親しげに潤に声を掛けてきた…Ωだ。 あからさまに俺に敵対心を剥き出しにしている。 身体中から、嫉妬、羨望、嫌悪…あらゆる負の色が撒き散らかされている。不愉快。 コイツ、誰だ? 「おっ、おおっ。久し振りだな。元気か?」 「うん!お陰様で。 デート中?うわぁ…綺麗なひと…初めまして。前田 (ひかる)っていいます。 あっ、俺、学生の時に、潤と親しくしてたんですよ。」 ピクッと俺の頬が引きつった。挙動不審な潤。 ふーん…昔…『付き合ってた』奴の一人か… 「そうでしたか…主人がお世話になりましてありがとうございました。 家内の…麻生田 右京と申します。」 ぶわりと、スーパーΩのオーラを身に纏い、余裕の笑みを浮かべて毅然として言い放つ。 そこら辺のΩが粋がってんじゃねーよ。 番の俺をナメるなっ! それにビビったのか、マエダヒカルと名乗った男は一歩後退し、しどろもどろに何か呟くと、潤の問い掛けに『ダンナと一緒だ』と答え…ぺこんとお辞儀をして逃げるように去って行った。 逃げるくらいなら最初からケンカ売るなよっ!

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