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お久し振りね side:右京⑤
それでも潤は、俺のことを『愛してやまない番だ』と言った。
それは本心だろう。
でも
俺は気分が悪くて仕方がなかった。
昔の潤のことは知らない。問い詰めるつもりもないけれど。
かなり浮名を流したとは聞いている。
二人のせっかくのデートにケチをつけられ台無しにされて、この怒りをどこに持っていけば良いのか分からなくなった。
さっきまでのウキウキした気持ちも、潤を誘うフェロモンも、何処かへ消えてしまった。
せっかくお膳立てしてくれたお義母さんには申し訳ないけれど…もう、帰ろう…
必死で言い訳をする潤に向かって静かに告げた。
『ご馳走様でした。美味しかったです。
ありがとう。
…もう十分楽しませてもらったので帰りましょうか。』
潤が慌てて反論する。
『結婚してからはお前だけだ』
『気分を悪くさせて申し訳ない』
『右京だけを愛してるんだ。信じて。』
なーんて、いろいろ並べ立てていたけれど…挙句にあの潤が目を潤ませて
『お願い…帰らないで…』
と懇願してきた。
潤からは、俺を“愛してる”と叫ぶような濃いフェロモンと、一途に俺を思うカラーが溢れていた。
嘘じゃない。潤は俺だけを愛して求めてるんだ。
捨てられた犬のように しょげかえり、項垂れる潤を見ていると、許してもいいかな、と思えてきた。
畳み掛けるように念押しする。
『本当に…結婚してからは俺だけ?』
『当たり前じゃないかっ!
結婚してその日に、関係のあった奴らとは全て縁を切ったんだ!
疑うならお袋や新道さんに聞いてくれよ!
…俺、チャラいけど、右京一筋なんだぜ!?
右京しか目に入らないんだ…』
これ以上問い詰めるのは酷かも…
俺と出会う前のことならば仕方がないか。
遊んでる風もないし。
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