616 / 829

お久し振りね side:右京⑥

今ここで拒絶してこのチャンスを逃したら、俺達はこの先ずっと愛し合えない気がする。 変な予感が頭をよぎった。 せっかく時間を作ってくれたお義母さんと、この後に続く詩音君の顔が浮かんだ。 そして…優… パパとママは仲良しがいいよね… 俺だって…俺だって潤だけを… 「…右京…」 散々弁解して、最後に切ない声が俺の名を呼ぶ。 俺はじっと潤を見つめていた。 絡み付く視線も、身体から放たれるフェロモンもカラーも、嘘をついてはいない。 ひたすらに…俺だけを求めていた。 「じゃあ…それ、証明してよ。」 「え?」 「『俺だけ』って言うなら…証拠見せてよ。」 言いながら頬が火照るのが分かった。 それからの潤の行動は素早かった。 俺の手を掴み指を絡め席を立つ。 途中、のマエダヒカルの席を脇目も振らずにすり抜けた。 未練がましい彼の色と視線は潤を追っていたが…すぐに消えた。 タクシーに押し込まれ、無言の俺達は指を絡めたまま、立ち昇るお互いの匂いに酔いしれていた。 俺は肩を抱き寄せられ、それに抗うことなく頭を潤の肩に乗せ、時折降ってくるキスに応えていた。 軽く啄ばむようなキスは、やがて舌先を捻じ込まれ、ちゅくちゅくとイヤラシイ音を立て始めている。 溢れ出る唾液を啜られ、口内を蹂躙された。 久し振りの熱烈な求められ方に、頭がぼんやりしてきて思考回路は焼き切れそうになっている。 ココジャイヤ ヤメナイデ モット モット ホシイ 相反する思いに胸の鼓動は跳ね上がり、繋がれたままの反対の手で、潤のスーツの胸元を握り締めていた。 焦ったような運転手の咳払いが聞こえるが、今の俺達には他人のことを考える余裕なんてなかったんだ。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!