623 / 829

羨望 side:詩音③

「あ…泣かしてごめん… 香川先生のオッケーが出てからも、中々そんな雰囲気にならないし… 勿論、詩音の体調も、仁の世話で大変なのも分かってるんだよ!? でもさ… 俺、詩音に構ってもらえなくて寂しかったんだ、きっと。 帰ってきて変な態度とってごめん…デートに行った兄貴が羨ましかったんだ。」 「…ううん。俺も…おめかしして、うれしい匂いを振りまいてる右京さんが羨ましかったんだと…思う…. 今日はお義母さんが予約してくれてたエステにも行って、ピカピカ輝いて、凄くうれしそうな匂いがずっとしてて… ディナーは、リクエストしてフランス料理だって言ってた。 お義兄さん、帰ってくるなり右京さんを拉致して行っちゃったんだ。 継の気持ちもとっても分かってたんだけど… 仁が起きちゃったらどうしよう、とか、傷口が裂けたらどうしよう、とか、またすぐに妊娠しちゃったらどうしよう、とか… いろんな“どうしよう”が頭で回ってて… ゴメンナサイ。」 「俺こそ…気を遣ってやらなくて、ごめん。 …あのさ、今夜さ…絶対、絶対手を出さないから、裸で“ぎゅーっ”ってして寝てもいい? 仁が起きたら俺があやすから。」 「…おっぱいだったら、どうするんですか…」 「ミルクがあるだろう。俺が作る! だから…ね、ね?」 お願いモード全開の継に、くすりと笑いが漏れた。 「…はい。」 恥ずかしくてひと言だけ返した俺を継はまた、ぎゅーっ とだきしめてきた。 とくとくとくとく いつもより早い心臓の音と甘い匂い。 胸に擦り付いて、そっと目を閉じる。 こんなにも愛されて優しくされて…俺は幸せ。 甘い匂いに包まれて、俺はひと時の幸せな気分に酔っていた。 その間、ひたすら『忍』の字で、継が耐えていたことにも気付かずに………

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!