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羨望 side:詩音③
「あ…泣かしてごめん…
香川先生のオッケーが出てからも、中々そんな雰囲気にならないし…
勿論、詩音の体調も、仁の世話で大変なのも分かってるんだよ!?
でもさ…
俺、詩音に構ってもらえなくて寂しかったんだ、きっと。
帰ってきて変な態度とってごめん…デートに行った兄貴が羨ましかったんだ。」
「…ううん。俺も…おめかしして、うれしい匂いを振りまいてる右京さんが羨ましかったんだと…思う….
今日はお義母さんが予約してくれてたエステにも行って、ピカピカ輝いて、凄くうれしそうな匂いがずっとしてて…
ディナーは、リクエストしてフランス料理だって言ってた。
お義兄さん、帰ってくるなり右京さんを拉致して行っちゃったんだ。
継の気持ちもとっても分かってたんだけど…
仁が起きちゃったらどうしよう、とか、傷口が裂けたらどうしよう、とか、またすぐに妊娠しちゃったらどうしよう、とか…
いろんな“どうしよう”が頭で回ってて…
ゴメンナサイ。」
「俺こそ…気を遣ってやらなくて、ごめん。
…あのさ、今夜さ…絶対、絶対手を出さないから、裸で“ぎゅーっ”ってして寝てもいい?
仁が起きたら俺があやすから。」
「…おっぱいだったら、どうするんですか…」
「ミルクがあるだろう。俺が作る!
だから…ね、ね?」
お願いモード全開の継に、くすりと笑いが漏れた。
「…はい。」
恥ずかしくてひと言だけ返した俺を継はまた、ぎゅーっ とだきしめてきた。
とくとくとくとく
いつもより早い心臓の音と甘い匂い。
胸に擦り付いて、そっと目を閉じる。
こんなにも愛されて優しくされて…俺は幸せ。
甘い匂いに包まれて、俺はひと時の幸せな気分に酔っていた。
その間、ひたすら『忍』の字で、継が耐えていたことにも気付かずに………
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